ヨハネの黙示録・全ての謎が分かる

The Seven Seals

◆◆◆ 危機の本質と理想国家建設 ◆◆◆
2007.12.21 窪田光治  ◆◆◆

1.はじめに

2.危機意識とは何か

① クラゲと浮き草型人生
② 鮭型人生
③ 危機意識とは理想とのギャップ

3.日本の経済危機・国家破綻の本質

 ① 経済バブル発生と破裂の構造を検証
 ② その後の15年間の政策
 ③ 既に日本は崩壊の過程にある
 ④ 本来あるべきバブルの後遺症対策
 ⑤ 今後予想される国家破綻の様相
 ⑥ 破産処理案「ネバダ・リポート」
 ⑦ 不況と失業をどのように考えるか
 ⑧ 真の光明思想とは

4.資本主義の崩壊という危機

 ① 現在は資本主義崩壊の過程にある
 ② 資本主義崩壊のクライマックスはいつか
 ③ 理念経済とは
 ④ 解決すべきテーマ
 ⑤ 日本はお手本になれるか

5.日本の精神的危機

 ① 骨を抜かれた日本人
 ② 危機に無力な組織
 ③ 国民の生命財産を守る国家の義務
 ④ 若者の魂の叫び
 ⑤ 日本が直面している現実的な危機
 ⑥ 危機を正しく見ることからはじめよ

6.真の危機管理とは何か

 ① 草を見ずして草を取る
 ② 目に見えない無駄と損失
 ③ 目に見えない利益
 ④ 悪いことを報告する者を大事にする
 ⑤ 危機を未然に防ぐ

7.危機管理意識の具体例

 ① 計器盤と機長
 ② 物の滞留と人の動きを観る
 ③ 国家の遅れた会計システム
 ④ リアルタイムで読む大事さ
 ⑤ 松下政経塾
 ⑥ 阪神・淡路大震災の秘話
 ⑦ 誰も言わない日本最大の放射能危機
 ⑧ アメリカ軍による日本の再占領
 ⑨ 地震予知によって安全に原子炉を停止させる方法
8.危機意識発現の原理

 ① 危機回避の原理
 ② 危機を見透す原理
 ③ 理念というフィルム醸成の原理

9.おわりに

1.はじめに

 三次元世界における理想国家建設は夢に見るだけでは実現しません。心の問題はもちろん最も大切なことですが、ここではもっと具体的な話をしようと思います。遠い夢物語として考えるのではなく、今現在という断面の中にユートピアの萌芽があり、その観察の中から学ぶべき事が沢山ある、三次元世界で修行する大きな意味がここにもある、ということをお話ししたいと思います。




 まず、人々の営み、生活そのものである経済、そして経済が発展する中で様々な摩擦や問題を調整するための政治、そういった社会に対する様々な事柄に対する関心を持つことが出発点です。そして、問題が「芽」のうちにこれを取り除くことが大事であり、芽を取り除くことが危機管理の本来の姿です。そのためには様々な問題の本質を考え、鋭敏な感性を持つことが必要になります。

 後になって考えると、ああすれば良かったということが幾らでもあります。例えば、地球温暖化の問題などは、30年も前から科学者は警告しており、また東海沖地震、東京直下型地震などについても数十年前から地震学者は警告を発してきているのです。阪神・淡路大震災で、なぜあれほどの人が亡くなり、火災を消火出来なかったのか、あれこそ正に人災であり、危機管理と戦略的頭脳の欠如した良い例です。皆様の多くは知らない決定的事実を例に挙げてお話しします。

 様々な例を挙げながら、理想国家建設のためには正しい危機管理が欠かせない事、またそれは家庭、職場、地域、国家、世界の指導者が率先して取り組まなければならない事、などをここで明らかにしたいと思います。

2.危機意識とは何か
          
① クラゲと浮き草型人生

 危機を語る事を避けて通る、あるいは考えることすら忌み嫌う方々が多くおられます。また楽観論者と悲観論者という分類があります。危機を語る者を悲観論者として分類し、あたかも主義主張の違いであるとか、光明思想に反するとか、神理に反するとか、そのように考える方が多いのは大変残念です。

 本来、考えるべき事を考え、成すべき事を全て成した後に楽観主義(神にお任せする)という心境に到達し得るのであり、何も考えず、何も手を打たずに楽観主義を奉ずるとしたら、それはただの平和ぼけであり、例えは悪いかも知れませんが、クラゲや浮き草のごとく、水の流れ、風の流れに身をゆだねただけの人生・家庭・組織・国家であり、人間本来の生き方、神理から大きく外れていると言わざるを得ません。

 何故ならば、医者が患者を診断し、「貴方は胃癌にかかっています。酒の飲み過ぎで肝臓が弱っています。生活を改め、場合によっては入院して手術をしないと、他に転移して死に至るかもしれませんよ」と言ったとします。あるいは、御主人が奥さんに「外出するときはガスの元栓を閉め、電気を消し、戸締まりをするように」と言ったとします。これを悲観論者だと言い危機を語る者として忌み嫌うのでしょうか。

 ここで、患者や主婦を日本国と置き換えればどうでしょうか。医者と同様に、危機を乗り越えるためには、まず危機を「正しく見る」ことからはじめるべきであると考えます。さらに私は、危機を未然に回避し大事に至らしめないためには、国民一般の多くが「正しい危機管理意識」を持つことが必須条件であるという信念を持っています。

② 鮭型人生

 危機を語ることを嫌う人は、「恐怖心を与える」「人心を惑わす」などを第一の理由に挙げます。それはある意味で正しいと思います。すなわち、多くの人々が恐怖心を持つことで、それが負のエネルギー発生源となり、その結果として神の光を遮り、より大きな危機を招く可能性があるからです。その原理そのものは正しいのですが、より一段上の次元から見たとき、そうではありません。

 台風を語らなければ、台風は来ないか、また目の前に来ている台風を避けられるかというと、そうではありません。来るものは来ます。であるならば、周到な備えと心構えをすることによって、恐怖心を克服すべきであるのです。人間は神の子であり、理性を持っています。恐怖心は理性によって克服することが出来るのであり、人間の智慧と勇気と真の愛が試される時であると思います。

 鮭は大海で成長した後に、生まれ故郷の川に戻り、流れに逆らって急流をさかのぼって産卵し、その直後に死にます。鮭を人間に置き換えて考えると、鮭には大きな智慧と勇気が備わっており、死と引き替えに子孫を残す大愛を実践している、そのように見えます。クラゲや浮き草ではなく、人間は鮭のように生きるように本来は創られているのです。

③ 危機意識とは理想とのギャップ 
  
 危機というと特別な恐ろしいクライシスのように受け取られる人が多いのですが、そうではありません。前述したように、身近な健康に関することも、安全に関するすることも、全く同じです。それを健康管理、安全管理と呼んでいるだけであり、危機管理の一分野に過ぎません。そうすると、危機管理とはあらゆる分野における、大切な意識であることに気がつくはずです。それは何でしょうか。

危機意識 〓 理想とのギャップ意識

なのです。ですから、理想国家建設と切っても切れない関係にあります。「8.危機意識発現の原理」で詳述しますが、具体的な例を説明するに従い、次第に危機管理に対する認識が深まるはずです。

 現在、日本をはじめとして世界の政治・経済はますます混迷の度合いを深めつつあります。まず日本の危機の本質を論じ、真の危機管理とは何か、さらに理念経済システム建設・理想国家建設との深い関わりについて論じてみたいと思います。日本をテーマとして論じていますが、世界、人類、地球という大きなテーマに関しても適用できる大事な考え方である事に変わりはありません。

3.日本の経済危機・国家破綻の本質

 戦後、国民は必死に働きました。様々な要因に助けられたとは言え、順調に経済回復を続け、さらに高度成長時代を迎えて世界でもまれにみる急成長を遂げました。そして、先進国の一員になりました。「戦後は終わった」という言葉がささやかれたこともあります。日本人が自信を持ったときです。しかし、ここに本質的に大きな問題があることに気付かなかった。

1  高度成長の陰に隠れて、行政組織の肥大化、医療・福祉関係の肥大化、税金の不平等化、規制に守られたひ弱な産業に国民の多額の税金をそそぎ込む体質、政治家と官僚の腐敗さらに一部産業界との癒着などが深く深く進行していたこと。

2  経済成長とは別に、お仕着せの憲法という「たが」をアメリカ合衆国からはめられていた日本は、とうとう現在に至るまで「精神的独立」を果たせず、国家の命運を左右する政策を自国だけで立案・施行することができないで今日に至ったこと。

① 経済バブル発生と破裂の構造を検証  

 ここでバブルの発生と破裂の構造を検証してみます。

 経済成長と共に日米の貿易摩擦が大きな問題となったわけですが、アメリカの意向におびえた日本は、内需拡大を促進する必要に迫られ、資金の流動性を高めるという単純な政策を安易に実行しました。経済が好調なときに低金利政策へと一気に転換したのです。この政策によって流動性の高まった資金が株と土地へ流れ込み、そのために価格が高騰を続け、いわゆる資産バブルが発生しました。

 土地と株を持つ者は更に富を増大させた結果、国民の間に「著しい富の偏在」という現象を生じさせました。資産が見かけ上膨らみ続け、国民の気持ちが一挙にゆるみ、そのために大量消費に走り贅沢品を買いあさりました。異常な消費拡大に浮かれて、企業は過剰な投資と設備をしてしまい、また人件費も大盤振る舞い、その結果、設備バブル、人件費バブルとなったのです。現在は、その反動が進みつつあり、その反動がまた新たな社会問題を創り出しています。

 著しい富の偏在化により次第に持たざる者が嫉妬心を抱くようになり、これが国内で大きな渦となりエネルギーとなっていったのです。当選するためには何でもするという節度と信念を喪失した政治家は、マスコミにあおられるままに金利を一挙に高騰させ、また総量規制という政策の急展開によって、今度は資産バブルを一挙に破裂させたのです。

 その結果、約2000兆円という国家の富が一挙に消失しました。単純に考えればバブル発生以前の状態に戻っただけなのです。しかし、バブルの期間を通じて様々な経済活動が行われ資産が底上げされましたから、バブルの破裂は国民・企業の資産内容に「含みの損」を「一挙にかつ大量に発生」させたわけであり、正にこの事が問題であったのです。

 以上がバブルの発生と破裂の基本的構造であると考えます。

② その後の15年間の政策
    
 その後も、構造的問題から目を背け、一貫して事態の先送り政策、ひたすら経済が回復することを祈るという他力政策であったと考えます。

 再び取った政策、資本主義史上でもまれにみる低金利政策(不良銀行・企業を倒産させないために)にもかかわらず、貸し渋りなどにより血液が経済界に循環せず、又一方では健全な企業の投資意欲もわかない、さらに年金の破綻などが懸念される事態となりました。また消費活動が低下して「健全化」したために、企業の供給能力は需要を大きく上回り(需給ギャップ)、過剰な設備と人員を抱えた企業の業績は悪化の一途をたどりました。

 長期間の低金利政策によって大企業の負債を凍結させて倒産を救い、更に約340兆円を国民から企業へ所得移転させて企業と銀行を救って来ました。ところが、この政策が別の大きな問題を創り出しました。円キャリートレードというものです。低利息の円を借り、ドルに換え、高金利の海外で運用する、その結果、中国・アメリカだけでなく世界中にバブルが発生する要因の一つとなり、今やその世界バブルが順次破裂しつつあります。

 あれから約15年余りが経過し、企業はリストラと非正規社員の採用拡大によって人件費の節減に努め、過剰設備も大分縮小されて、景気は回復基調をだどってきました。しかし、それは一部の大企業の話であり、中小企業をはじめ地方経済はそうではありません。先送り政策、痛みを和らげる大衆迎合型政策によって、国家と地方財政の事態は益々深刻、かつ再生不可能な事態も想定せざるを得ない状況に陥りつつあります。

③ 既に日本は崩壊の過程にある

 この様に見てくると、この間に実行された一連の経済政策は実に短絡的であることがわかるでしょう。この政策を実行すれば社会と経済にどのようなプラスとマイナスの影響があるのか、というシミュレーションがなされた形跡がないのです。

 更に、調和のある豊かな社会創りをしてこなかったために、学級崩壊という教育問題、子供を産まなくなったために迎える高齢化と少子化、低金利による年金の崩壊、社会福祉予算の肥大化、医療費の肥大化、土建国家と呼ばれる税金の無駄遣いと国家のコンクリート化そして自然破壊、不平等な税制、規制のために新規の産業が育つよりも廃業する方が多い現状、そして国家と自治体の財政破綻など、いずれをとっても解決困難な様々な問題を抱えることになりました。

 正に日本の政治・経済・教育などの社会システム全般にわたって、崩壊する危機に直面しています。いえ、すでに崩壊の過程にあると見るべきでしょう。

④ 本来あるべきバブルの後遺症対策
   
 バブルの後遺症を基本的に解決するためには、まず不良銀行・不良企業の整理淘汰を進めることで損失を確定する事が大事です。この事によって資産と債務の実体を正しく認識する事ができます。そこで、国民の意識と生活をその実体にに合わせていく以外にないと考えます。さらに、行政組織を簡素化、民営化、農業・漁業を筆頭とする規制に守られた産業を自立させるなど、国家全体の効率化を図る必要があったのです。

 しかし、当然のことながらこれらの政策は大量の倒産と失業を招きます。負債を整理し、国家の無駄を省くという改革をすることは、マクロ的に見ると国民の財産で負債を穴埋めし、かつ無駄で飯を食っていた社会的に効率の悪い方々がすべて失業するわけです。

 そして新しい産業が育ちこれを吸収していくまでの間、国家がこの方達の生活を援助する事になります。(本格的に新しい産業を育てるためには、環境整備と意識改革が求められ、長い時間と継続的な啓蒙が必要です。)

 当然、そのような政策を採用すれば、景気は一段と悪くなり、日本の全企業の一割や二割は倒産するかもしれません。大幅な増税も必要になるでしょう。それでも、目先の不景気と国民の批判を恐れて、先送り政策をとるべきではなかったのです。ここが、民主主義の大きな問題点です。問題を先送りしつつ、国家破産の道をばく進し、その結果いかなる事態が発生するのか、きちんとシミュレーションをして、国民に情報を正しく伝えるべきでした。

 恐怖心を与え、人心を惑わす、つまり人が嫌がる政策を採用できない、それが現在の民主主義であり、日本だけでなく先進国は皆似たり寄ったりです。

⑤ 今後予想される国家破綻の様相

 現在は赤字国債の発行、税金の投入というモルヒネによって痛みを押さえ小康を保っている様に見えます。しかし、2000兆円の富の消失を景気回復によって埋めることはもともと不可能なことであり、小康を保っているように見えても、刻々と癌が全身を蝕み続けるように病気が進行しており、やがて何かのきっかけでがたがたと崩れていく将棋崩しのように、全身から膿がどっと吹き出すことになるでしょう。

 このままの政策を続けたとき、数年以内に郵便預金の崩壊をはじめとして地方自治体と国家の債務不履行が懸念される事態となります。すなわち、実体としてすでに破産状態にある国と自治体が、その現実を国民に隠せなくなる様々な現象が現れてくることになるはずです。具体的な現象として考えられるのは、超円安とハイパーインフレが進行し、貨幣価値の大幅な下落、輸入物価の高騰、気がついたときには預金が何の価値もないものになっているでしょう。

 この間、国民生活は著しく破壊され、経済活動は極めて大きな打撃を受けるはずです。全企業の五割ぐらいが倒産するかもしれません。そして、ここに至ってはじめて、国民は政府にだまされていたこと、そしてもう任せてはおけないことにようやく気づくはずです。

 積極的に切開手術をするか、成り行きに任せて国家破産を経験するか、もはや嵐を避けて通ることはできない。今しなければならないことは「覚悟を決める」事であり、それが活路を開く唯一の出発点であると考えます。そして現在は、国家破綻の後の再生プログラムを研究するべき時なのです。

 実を言うと、2007.12.18現在、アメリカ合衆国のサブプライム問題を発端として、世界のバブルが弾けつつあり、数年をかけて、合衆国と世界は深刻な経済危機に陥ると思われます。日本国の破綻が先か、合衆国の破綻が先か、そして金融恐慌・世界恐慌へと発展する事態が予想され、前述したような単純な推移ではないと思います。これは後述の資本主義崩壊で詳述します。

⑥ 破産処理案「ネバダ・リポート」

 日本が破産するかしないかが問題なのではなく、いつ破産するか、これが国際的に定着している見方であり、実を言うと、既に日本を除く先進国同士でその対策は既に終わっています。対策とは何か、それは第一に、日本の海外資産の全面凍結、そして「ネバダ・レポート」に代表される経済的な日本再統治案です。

以下は「日本国破産への最終警告」PHP研究所 森木亮著、からの抜粋である。

◇破産処理案「ネバダ・レポート」P.77

 日本の破産的な状況は国外でも注目されている。どういう注目のされ方かといえば、もし本当に破産したら、IMF(国際通貨基金)はどうすべきかの処方菱までつくっている。その具体的な案の一つが「ネバダ・レポート」である。ネバダ・レポートは、二〇〇二年(平成十四)二月十四日、衆議院予算委員会で明らかにされ、当時の竹中平蔵金融担当大臣もその存在を認める答弁を行った。

 拙著『2008年IMF占領』で示したネバダ・レポートの要点は次の八点だ。

① 公務員の総数および給料の30%カツト、ボーナスはすべてカット
② 公務員の退職金は100%カット
③ 年金は一律30%カット
④ 国債の利払いは五年から十年間停止
⑤ 消費税を15%引き上げて20%へ
⑥ 課税最低限を年収100万円まで引き下げ
⑦ 資産税を導入して、不動産に対しては公示価格の5%を課税。債券・社債に対しては5~15%課税。株式は取得価格の1%を課税
⑧ 預金は一律にペイオフを実施するとともに、第二段階として預金額を30~40%カットする

 実に具体的な日本処理案である。過酷といえば過酷だが、政策としては当然のものばかりである。

 こういう事を、日本人の大分部が知りません。また新聞やテレビでは報道もされなかったのです。これこそ見ざる・聞かざる・言わざるであり、幕末から「坂の上の雲」(司馬遼太郎著)当時の、知的であり理性的であり、勇気と智慧の限りを尽くして故郷の父や母を守るために死んでいった多くの普通の人が持っていた精神構造は一体どこへ行ったのでしょうか。その原因については後述します。

⑦ 不況と失業をどのように考えるか 

 不況や失業というものをユートピアの理念に反すると捉えるのは誤りです。発展・繁栄し活力のある経済社会というのは、この不況と失業というものは避けて通れないものです。何故ならば、豊かさを求めて社会が発展成長し続けていくということは、社会がたゆまず変化し続けていくということであり、環境やニーズの変化に対応できない企業は衰退し淘汰され、また一方で新しい産業が育っていきます。若者達にチャンスがあるわけです。

 従って活力のある社会は、一定の倒産と失業があるのが正しい姿であると言えます。理想国家、ユートピア国家といえどもそれは変わりありません。このことから、不況というものを単なる悪と捉えるのは間違いである事がわかります。むしろ、不況というのは文明が社会システムと企業に対し変革を求めている現象であり、この事を通じて蛇が脱皮するがごとく社会と企業が整理淘汰され変革していく、そして新しい活力を得ていくための産みの苦しみとして捉えるのが正しいと言えます。

 現在という時点は、文明そのものが変革を求められているのですから、不況と失業問題がかつてないほど大きくなっているのです。(現在の不況は大不況の始まりであり、徐々にその大きさが見えてくる。)すなわち、不況というものは繁栄と発展の軌道に乗せるための大いなる現象です。古い体質を変革する最大のチャンスであり、智慧を絞り積極的に勇気を持って対応すべき事であるのです。

⑧ 真の光明思想とは

 これが光明展開であり、真の光明思想であると考えます。闇を闇として見ない、いや見ようとしない、不況を不況として見ないという、短絡した見かけ上の光明思想は何の役にも立ちません。闇をまず闇として見、不況をまず不況として見、それを深く観察し洞察して後、本来あるべき姿(理念)に近づけるための糸口と方法を研究するという積極的な思想展開がなされなければ、この世の現実を変えていく力は生じてこないと考えるのです。

 経済的に国民が塗炭の苦しみ味わうことはあるでしょう。しかし、新しいビジョンを国民に示す、理論的に必ず到達するという目標、すなわち理論に裏打ちされた希望さえあれば国民はこの困難に充分に耐えられるはずです。

 現在はその不況と危機の構造を理解すること、足らざる事を反省すること、精神的独立を果たすこと、本来あるべき姿・理念を模索すること、さらに智慧を絞って不死鳥のごとくよみがえる具体的政策と手順を必死になって考えるときです。

 高齢化は刻々と進行していきます。日本で唯一の世界に誇れる電気・機械などの製造業の崩壊という病気までが進行してしまうと、日本はもはや過去の歴史の彼方に埋没するだけの老人国家となってしまうでしょう。ピータータスカは、日本には三つ選択の道があり、その一つが「安楽死のシナリオ」であると著作の中で述べています。

 日本はこの危機を、国家再生のチャンスとしなくてはならない。危機を単に危機として見ていたのではそれができないはずです。また誰かがやってくれる、神風が吹くという他力本願でなく、国民一人一人が当事者意識を持ち、精神的独立を果たし、この「危機を正しく認識した上で、これを超越しなければ日本の未来はありえない」と考えます。

 弱き善人と強き善人の分かれ目は、正しい危機管理意識があるかないか、理性で恐怖心を克服することができるかできないかによって決まる、そう考えます。鮭型人生を生きるためには、生活の中で身近な所に危機意識を持ち、その小さな芽をつみ取る事から始めて下さい。本当は誰でも、生活の中ではやっているはずなのですが、そういう意識をもって取り組む事が大事であり、一層効果が上がるはずです。

4.資本主義の崩壊という危機
     
 資本主義崩壊、そんな馬鹿な、という人が大部分でしょう。経済をよくよく観察してみれば、確実にその崩壊が進みつつあることがはっきりと分かります。

① 現在は資本主義崩壊の過程にある

 アメリカ合衆国のメソジスト大学の経済学者であるラビバトラ教授は、十数年前に「共産主義の崩壊と資本主義の崩壊」という論文を発表しています。そして、共産主義はすでに崩壊し、現在、資本主義の崩壊が進行しています。

 いまや、多くの経済アナリスト、評論家、学者が現在の市場原理主義による資本主義の危機を訴えており、デリバティブの寵児と言われるあのジョージソロス氏が、5.6年前に「グローバル資本主義の危機」という著作を発表し、日本語でも翻訳出版されています。

 ラビバトラ教授によると、現在の資本主義システムは「著しい富の偏在化」を進行させ、それがやがて政治と経済を堕落させて資本主義そのものを崩壊させると言っています。また、ジョージソロス氏は市場原理主義は実体経済を著しく破壊し、その結果、資本主義そのものが崩壊する危機にあると言っているのです。

 市場原理主義の結果、著しい富の偏在化と実体経済の破壊が起こり、それが自らを滅ぼすという「悪魔のサイクル」の最終過程に現在は位置づけられると言えます。アメリカ合衆国の繁栄は、機軸通貨としての強みと日本の低金利政策によるドルの還流によって支えられている、いわば砂上の楼閣のごとくの繁栄であり、もはや長くは続かないはずです。

② 資本主義崩壊のクライマックスはいつか

 今や、多くの経済アナリスト、学者は警告を発しており、資本主義崩壊の時期を2010年と予測しているのですが、「未来からの警告」においてもジュセリーリ氏は2010年と予言しており、奇しくも一致しています。

 本来、貨幣というものは取引の決済に必要なものなのですが、この20年ぐらいの間に信用拡大が飛躍的に進み、今や実体経済の100倍ぐらいの資金が日夜コンピュータを介して、世界中を魔物のごとく動き回っています。いわゆるマネーゲームです。その魔物が実体経済を引きずり回している、という表現が出来るでしょう。

 数年前から、世界の住宅バブルが心配されていましたが、とうとう今年になって、米国のサブプライム問題が顕在化し、世界の中央銀行は深刻な状態に追い込まれています。急速な信用収縮と莫大な損失が相まってバブルの崩壊が進みつつあり、来年にかけて、より大きな危機を迎えるでしょう。

 現在の所、日本人はのんびりと構えていますが、いずれ個人にとっても重大な問題となって跳ね返ってくると予想されます。世界中のバブルが次々と破裂しながら、ドルが暴落し、やがて貿易の決済すら不能になる事態が予想されます。予想される具体的現象については、ここでは余り書かないことにします。

③ 理念経済とは 
           
 資本主義崩壊後、世界経済の立て直しの中で、理念経済がこれからの大事なテーマとして模索されるでしよう。

 ラビバトラ教授は「プラウト理論」という形で、その理念を発表しております。彼は、世界恐慌の引き金をひく確率の高いのは日本であると予言しましたが、一方でその中から不死鳥のように蘇り、世界の新しい秩序づくりに貢献する資格のあるのは、おそらく日本である確率が高いという予言もしております。

 自由という言葉は何でも自由ということではなく、本来、持続的かつ調和のある発展すなわち繁栄という方向性の中で許されている(神より)のであり、不調和と破壊という方向性の中では許されてはいません。従って、自由に裏打ちされた資本主義というものもある一定の制約・理念の基に運営されてこそ、真の発展と豊かさが追求でき、繁栄を続けることができると言えます。

 現在の資本主義は地球がまだ無限に広かったときに生まれたものですが、宇宙船地球号という概念が誕生するようになると様々な問題が出てきました。大きく分けると、環境汚染(温暖化、オゾン層の破壊、化学物質、放射能など)、偏在する資源とその枯渇、南北問題(先進国と後進国)、著しい富の偏在化(個人、企業、国家)が政治をゆがめてゆく問題、武器の輸出と地域戦争、発展に伴う後進国の人口爆発、人口増加・耕地の疲弊化・食生活の向上・気象の激変などから現在直面している食糧危機など、いずれも人類の存亡にかかわる問題です。
 
 ですから、地球環境の維持、有限な資源、地域格差と地域の権利・義務という視点を持ち、かつ持続的な繁栄と発展をするためには資本の流れに対して一定の水路(理念)を築くことで実体経済・地域経済を破壊しないシステム作りをすること、さらに人々が精神性を優先する価値観を持ち、人々の意識の流れを調和のある豊かな社会へと自然と導くようなシステム作りが要求されるようになっていくはずです。

④ 解決すべきテーマ 
       
 ところがここに大きな難問があります。
 

第一  従来の経済性・生産性・競争という概念といかに調和させていくか、妥協点を見いだすか。

第二  エネルギー消費を押さえ、温暖化を防止するために、先進国の義務と後進国の発展の権利をどう調整できるか。

第三 人口爆発と食糧問題をどう解決するか。

 第一は、理念資本主義に求められる非常に大きな争点であり、人類の智慧が試される点ではないかと考えます。第二に関しては、科学技術の発展により新しいエネルギーの誕生を待たなくては本質的な解決はないと考えられます。第三については、三次元地上世界において科学技術の発展も視野に入れた宇宙船地球号の定員という概念が登場するかもしれません。

 第一は、ここ十年・二十年の問題、第二は百年単位の問題、第三は神の領域の問題と言えると思います。しかし、現在はこの三つの問題が同時進行しております。これをどう調整し解決する糸口を見つけていくか、果たして人類に未来はあるのか、これはもはや地球経営の問題であり、人間の念いの限界を超えているかもしれません。

 第二、第三はともかくとして第一の問題で忘れてはならないことは、調和のためのコストが相当にかかるということです。真の自由を維持するためには常に一定の負担と努力が要求されるように、理念経済・理念資本主義には一定の持続的でかなり大きなコストが要求されるはずです。従って、一旦は、一人一人の自由度、企業活動の自由度はある程度制限され、当然のこととして負担も増えるはずです。簡単に言えば、一旦、物質的には貧しくなるということになるでしょう。

 理念経済・理念資本主義とはそういうものであるという認識をしていないと、気の短い人々はこんなはずではなかったということになるでしょうし、当然そうした人たちが反対することになります。しかしながら、時代の変遷と共に科学技術の進歩がその負担を次第に軽減していき、時間はかかりますが精神的にも物質的にも豊かな文明へと変革していくと考えます。

⑤ 日本はお手本になれるか

 この様に、私達の周囲で起きている様々な現象は、日本においては古い社会システムの崩壊、そして世界的には資本主義の崩壊という大きな流れの中で起きているのであり、そういう一段高い次元から見て、正しい理解を進めることがまず大事なことです。

 日本政府の経済対策が如何に的を得ていないものであるか、場当たり的であるかがよくわかると思います。先を予測して、それが理想から外れるのであれば、修正をする、これが当たり前の原理であり、これこそが危機管理の原点です。民主主義国家は大衆の民度によって決まるわけであり、日本人の精神構造は危機的状況にあります。

 しかし、日本には他の先進国には無い優れたものを持っています。前述のラビバトラは、やがて来るであろう理念経済に最も近い国、それは日本であると明言しています。精神性を優先する価値観を人類全体が持つことが様々な問題を解決していく前提になりますが、具体的にはたたき台になるお手本があって、次第に世界へと広まっていくというプロセスを経るだろうと思います。それが日本であるなら、私達が当事者である事になります。

5.日本の精神的危機  
        
① 骨を抜かれた日本人

 日本の危機にはもう一つ大きな別の要因があります。先ほど「精神的独立」と書きましたが、その本質はズバリ

「軍事的頭脳の消失」

「危機管理意識の消失」

「父性の消失」

 です。この三つの言葉は別々に見えても精神的構造においては全く同じものです。 
 
  『軍事頭脳を持っているか』 長谷川慶太郎 著 青春出版社 参照
  『父なくして国立たず』 石原慎太郎 著 光文社 参照

 すなわち、国家に対して「軍事的頭脳の消失」、社会に対して「危機管理意識の消失」、家庭において「父性の消失」が該当します。誤解があると困りますので補足しますが、軍事頭脳とは戦略的大局観のもとにシステム化された能力・機能の事であり、国家経営のあらゆる分野に必要な能力をいう言葉です。戦争をするための能力を言うのではなく、むしろ戦争を未然に防ぐためのあらゆる能力を含むものです。

軍事頭脳 〓 国家の戦争を未然に防ぐ能力
危機意識 〓 組織の危機を未然に防ぐ能力
父性意識 〓 家庭の問題を未然に防ぐ能力

 そして、それでも問題が発生した時は、国家・組織・家庭を守るために、自己の全てを捧げてこれに対処する覚悟を持つことです。これが、軍事頭脳、危機意識、父性意識の本質です。

 戦後、マッカーサーの政策は見事なまでに成功し、日本国は経済成長こそ大きな成果を得ましたが、精神的には骨抜きになりました。軍事頭脳の喪失が国家の危機管理意識を失わしめ、それが自治体・教師などに広がり、さらに家庭では「父性の消失」を産んでしまったのです。日本全体から、《大事な精神性が消失》してしまいました。それはアメリカ合衆国の戦略であったのです。

② 危機に無力な組織

 何度も一触即発となり、そして今もいろいろと騒がしい朝鮮半島有事の問題、また中国の覇権主義拡大によるチベット人併合問題、南沙諸島問題、尖閣諸島問題、ガス田開発問題、領海侵犯問題など、日本を取り巻く海は「波高し」であり、また可能性の高い台湾併合有事に対応する国家の装備・法律・戦略などがまだ未整備です。そして国民もまた正しい知識・正しい危機意識を持っておりません。

 近年何度もくり返されている大地震などの災害等において、例えば阪神・淡路大震災のような大災害に遭遇すると、たちまち行政組織は無力となり、そして学級崩壊・家庭崩壊・いじめの問題などの様々な社会現象などに対して、長い間放置したままであり、しっかりとした処方箋未だに示せていません。

 これらに共通して言えることは、政府・自治体・家庭における指導者が本来持っていなくてはならない危機管理意識と当事者意識の消失という問題なのです。かろうじてこの精神性を比較的失っていないのは、規制に守られずまた世界的競争にさらされている一部の産業、例えば自動車や電気・機械などの指導者達です。

③ 国民の生命財産を守る国家の義務 
     
 国家が国民の財産を守り幸福を願うならば、最悪の状態においてなお最善を尽くせるだけの装備を備え、非常時の法律を整備し、マニュアルを作成し、訓練し、更に国民一人一人に対しても正しい意識を育てる努力を、その国の指導者が持続的にしなくてはなりません。

 そして、その時間も資金も今まで充分にありました。この種の準備は、正しい状況分析をした後、一定の理念のもとに十年・二十年という時間をかけ、多くの智慧と協力を得ながら永続的に努力しないとできないことです。

④ 若者の魂の叫び

 家庭や学校においては、精神的父親・精神的教師の不在が様々な現象となって現れてきています。誤った子供の人権という御旗の前で、生徒や子供を正しくしかり、しつけることをしてこなかったために起きている現象と言わざるを得ません。断固とした真の母親と父親がいなくなり、断固とした教師がいなくなってしまったのです。

 誤った母性意識と軟弱な優しいパパに育てられたのですから、社会的なしつけが全くできていない子供が大変な勢いで増え続けています。今や、そういう子供が既にパパやママになってしまい、精神的に自立できない子供の再生産の段階に入っています。いじめ、援助交際、学級崩壊、たばこと酒の低年齢化、茶髪、勉強しない学生・・・など、日本の将来を担う若者達の現状はとても心配です。

 しかし、若者達は犠牲者です。彼らは、真に自分を強く・正しく・智慧のある人間に育ててくれる社会と大人を本能的に求めている、その反動としていろいろに現象が出ている、その様に私には感じられるのです。この現象を彼らの「魂の叫び」と観ることができます。

⑤ 日本が直面している現実的な危機

 エドガー・ケーシの日本に関する予言やノストラダムスの予言に見るような天変地異は別にしても、現在、日本は明治維新以来の未曾有の現実的危機を迎えようとしています。

  第一 年金、医療、介護、教育などの国家システム崩壊の危機
  第二 国家破産の危機
  第三 朝鮮半島有事、台湾海峡有事、中国の覇権拡大の脅威
  第四 東京直下型地震、南関東西部地震、東海沖地震、南海地震などの巨大地震という危機

 南関東西部地震とは別名小田原地震と言い、73年ごとに小田原付近を震源地として大きな被害をもたらしてきました。前回は相模湾を震源地とする関東大震災として知られています。ある地震学者は、統計学的に次回の発生を1998年±3年として警告を発していましたが、それを約10年超過しています。

 更に、原発との関連において後述しますが、個人の地震予知研究家、約10年間の地震予知の実験において、90パーセント以上の的中率を実績として持っています。彼は主として登録会員の会費によって研究を続けています。本来ならば、国家が研究をサポートすべきなのですが、東大を中心にした硬直した学会が、個人などという者の研究を認めようとしません。丸山ワクチンやEM技術なども同じです。

 これらの危機を直前に見ながら何の備えもないのは、正に「軍事的頭脳の消失」「危機管理意識の消失」の何ものでもありません。地震の予知が如何に大切な事かを後述しますが、現実に日本人数千万の命に係わるだけでなく、日本列島の半分が人が住めない土地になる可能性すらあるのです。その危機を救う可能性に最も近い研究を、前述の民間の一研究者が多くの市民サポータに支えられて、不眠不休で努力しているのです。この事実を是非知っていただきたいと思います。

⑥ 危機を正しく見ることからはじめよ 
   
 日本は、この危機と混乱の中から如何にすれば立ち直れるか、今それを考えるときです。 不況を忌み嫌い、危機を正しく見ようとしない姿勢では、いたずらに暗雲が広がるだけであり、また何の解決の糸口も発見できません。ますます不安を感じる人々が増え、やけくそ人生に陥る人が増えるだけです。

 少なくとも神理を学びユートピア建設を願う者としては、この不況を正しく見、危機を正しく見ることが大事であると考えます。そしてこれを大きな時代の流れの中で位置づけ、さらに不況と危機というのは、古い物が壊れて新しい物が生まれるという人類の歴史の転換点であり、さらに新しい価値観の文明を築いてゆくためのプロセス・試練であると受け止めなくてはならないのです。

 その様に考えるならば、現在起きている暗いと見える様々な現象の中で、これを単に暗いと見るのではなく、もっと積極的な姿勢に変わってくるはずであり、そうすれば助け合い、励まし合い、明るく、勇気を持って、智慧を絞り、様々な困難に取り組んでゆけるでしょう。これを私は、

「危機を正しく見、かつ危機を超越する」

と言っています。その本質は光明思想です。闇を闇としてまず見、危機を危機としてまず見、尚かつ、これにとらわれずに一条の光を探し出し、これを拡大しながら希望を理論的に確かなものにしてゆく理性的作業の事です。

6.真の危機管理とは何か     

① 草を見ずして草を取る

 「危機を正しく見、かつ危機を超越する」と言いましたが、これは危機を迎えている現在取るべき姿勢を言っているのであって、これはまだ真の危機管理ではありません。

悪農は草を見て草を取らず、
中農は草を見て草を取り、
善農は草を見ずして草を取る。

 という例えがありますが、物事を順調に進め、よけいなトラブルを避け、危機を未然に防ぐためにはこの善農でなくてはなりません。

 善農は目に付かない小さな草の段階でいつも軽く耕しているために、根が掘り返されて乾燥し枯れてしまうのです。ですから傍目には、ほとんど草は生えていないのに一生懸命手入れをしている、無駄なことをしている、そのように見えるのです。しかし、実はこの方法が最も労力が少ないのです。

 中農は草が生えてきてある程度大きくなってから、「さあそれでは」というわけで草を取ろうとしますから、深く根が張っていて労力が大変かかります。

 さらに最も大事なことは、雑草は少し大きくなるとすぐに花を咲かせ実を付けます。何十倍になった実が落ちて、毎年毎年、ますます沢山の草が生えてきます。善農は花が咲くずっと以前の小さい段階で耕していますから、年々、生える草の数が減っていき、やがてほとんど生えなくなっていくのです。

② 目に見えない無駄と損失
    
 これは有名なある大企業の、その工場の従業員から直接聞いた実際にあった話です。どの企業でもそうですが、社長というのは定期的に各地にある自分の工場を見て回ります。

 ある時、社長が巡回に来るというので、工場長をはじめ社員一同、工場を清潔にし、塵一つない状態で待ちかまえていました。社長が工場に入るやいなや、まず近くのゴミ箱のふたを開けてのぞきこみました。一枚のウエス(油などが部品についたときにこれをふき取るための布)が捨てられているのを発見し、これをつまんでみんなに見せ、これをゴミ箱に捨てるような工場はこれ以上見て回る必要はない、と言って帰ってしまいました。

 「たった一枚の布きれ」を捨てるのがもったいないという「けち根性」からではありません。「たった一枚の布きれすら」大事に使うことができないその工場の従業員の「心の状態」を観じて言ったことなのです。心の状態がそうならば、これは一事が万事ですから、あらゆるところで

「目に見えない損失」
「目に見えない無駄」

が行われていると、その社長は判断したのだと思います。つまりこの工場では、目に見えない莫大な損失を発生していると見たのです。 それを、行動で全社員の脳裏に焼き付けたのです。単に怒って帰ったのではありません。

③ 目に見えない利益

 現在はどうか知りませんが、トヨタでは封筒は裏返して二度使うと聞いたことがあります。また、手を洗う時に必要以上に水を消費しない工夫、使用しないときは照明を消す、必要なものを必要なだけ購入するなど、企業はあらゆる事に神経を使っています。

 企業では「整理整頓」「清掃」をまず基本として社員をしつけます。そうすることで、社員のモラルが高まり、細やかな気配りが自然と出来るようになります。精神論を口だけでいくら言っても良くなりません。ほんのちょっとの工夫とその心がけが従業員の気持ちを引き締め、啓発し、年間を通すと全体で大きな

「見えない利益」

を生み出すのです。

④ 悪いことを報告する者を大事にする 

 今から千五百年前、中央アジアに騎馬民族を率いるアッチラ大王というのがいたそうです(浅井隆 著「史上最強の不況脱出法」徳間書店より)。

 ヨーロッパに攻め込んでは白人を大勢殺したためにヨーロッパの歴史から見るととんでもない悪逆非道の大王でした。ところが最近、アメリカの歴史学者によって見直されました。アッチラ大王は総勢七十万人の騎馬兵を率いていたそうで、これはとんでもない統率力である、ということで調べていくと、その秘密がわかりました。アッチラ大王が最大の戒めとしていた言葉があり、

「悪い報告をしたものを誉めよ」
「悪い報告をしなかった部下は罰せよ」

というものでした。

 「組織にとって今こういう悪い兆候がある、早く改善しないと組織がつぶれますよ」という耳の痛い話を、最も大事な情報として取り入れた、ということでしょうか。そういう兆候を見つけるのは部下の一人一人であり、危険な兆候であると判断して報告するのですから、部下の一人一人が当事者意識と正しい危機意識を持っていたということになります。これを「アッチラズ・ルール」と言うそうです。

  この例え話をいろんな事に置き換えて考えてみてください。細かい事の様に見える段階、その兆候が出た段階で軌道修正をし、更に悪化しないための布石を打っていくことが大事です。野球で言えば、ファインプレーは中農に当たります。優れたプレーヤーは、球の来るところをあらかじめ推理してその近くに陣取りますから、難なく球を取ることができます。善農ということです。

⑤ 危機を未然に防ぐ

 すなわち、家庭、企業、自治体、国家、地球というあらゆる世界と、様々な階層でこの事が言えることに気づくでしょう。指導者とかリーダーは、現在の様々な現象の中に、「未来の小さな萌芽」を発見し、未来に対する軌道修正と布石を打とうと考えるものです。

 しかし、組織(家庭も含む)の構成員の一人一人がその精神を理解していないと、真にその効果は発揮されません。これを理解しない人には、細かい、小人物、肝が小さい、ケチ、心配性、取り越し苦労、愛がない、厳しすぎるとしか見えないのです。

 ところが、この様な指導者の言うことしぶしぶ聞いて実行しているうちに、いつの間にか物事がいつも順調に進み、仕事が楽しくなってくるのです。その国家なり企業なり家庭なりがトラブルに巻き込まれたり、また停滞することなく変革を続けながら繁栄を続けるための条件、この一つが真の危機管理意識であるのです。

「危機を予測し、危機を未然に防ぐ」

 真の危機管理というのは、家庭をユートピアにし、企業、自治体、国家、世界をユートピアにしていく大事な要素の一つであることがおわかりいただけたでしょうか。その精神構造の原点は「無条件の愛」以外の何ものでもありません。

7.危機管理意識の具体例

 さらに幾つか、具体的事例をあげてみましょう。

 経営とは、国家・自治体・企業・家庭に至るまで、あらゆる組織体において当てはまる言葉であることに異論はないでしょう。この経営にとって最も大事な生命線とも言うべき危機管理の話です。

① 計器盤と機長

 京セラの会長である稲盛和夫氏の著書に「実学」(日本経済新聞社)というのがあります。副題に「会計がわからんで経営ができるか」とあります。
 私も、小さな企業ですが会社を創立以来ずっとそういう信念でやってきましたし、最初の数年間は自分で帳簿を付けていましたので、稲盛氏の言いたいことが大変よくわかります。 この本の中で、稲盛氏は

「会計・経理とは、ジャンボジェット機のコックピットであり、無数に配置された計器盤である。経営者はその機長である。」

と言っています。

 飛行機は企業であり、あらゆる組織体、国家であると考えて下さい。計器は何を示しているか。進路、地形、気象、高度、気圧、気温、燃料、エンジンの回転数、油温、客室の様子など、飛行機の運転状況を刻々と表しています。

 その数値と変化を見ながら、夜間や濃霧の中の離発着、飛行するルートの確認、気象の変化を読みとり、乱気流を未然に避け、安全を最大限に確保しながら旅行客を楽しく旅させているわけです。また、エンジンや各装置・機器類の異常をいち早く察知し、これを大事に至らせない前に適切な処置を取ろうとします。そのために、

コックピットの計器類は、機長の目であり、耳であり、鼻であり、皮膚である

のです。皆様が、目が見えず、耳が聞こえず、鼻が利かず、皮膚の感触が無いとしたらどうでしょうか。

② 物の滞留と人の動きを観る

 経営者にとって、経理というのはそれほど大事な物です。更に重要なのは、経理の数字をそのまま信じないことです。経理・会計というのはお金の流れだけではなく、物(製品・原材料・設備・特許・・・・・)の滞留と流れ、人の動きや働き具合も同時に表すものです。お金の出し入れは目に見えますが、物の滞留と流れ、また人の動きはなかなか見えません。

 従って、数字が何を意味しているのか、実体と数字が正しく対応しているか、これを現実感を持って読みとるためには、会計と現場と技術の三つを把握しないと実態はわかりません。 現場と技術がわかった上で数字を見ると、その数字が本来あるべき(理念)数字かどうかがわかり、改善するためのポイントが見えてくるのだと私は思います。

③ 国家の遅れた会計システム

 ここで、各地方自治体(都道府県・市・町・村)と国家を考えてみて下さい。そこの長は年間を通じ、企業とは比べ物にならない莫大な予算を扱っています。その方達は、会計(経理、財務、税務)がわかる人でしょうか。

 企業は全て複式簿記を採用していますが、自治体や国家は未だにそうではありません。簡単に言えば、お金の出し入れしか見ていないのです。資産がどのくらいあるか、効率よく運営されているか、寿命は後どれくらいか、借金は返せるか、・・・・・こういうことがすぐにはわからないシステムを採用しています。

 更に機長は様々な技術の習得と厳しい訓練を経てはじめてなれるプロです。自治体や政府の長となる方たちはどうでしょうか。その道のプロとしての教養があるのでしょうか。現在のように複雑多岐にわたる行政とお金の流れを把握し、かつこれを思い通りに動かしていくのは、並大抵ではありません。

 地方自治体と国家が破産に直面しているのは、こういう意味から言えば「ありありと見える」ほど当然の帰結なのではないでしょうか。

④ リアルタイムで読む大事さ
   
 計器はリアルタイムで刻々とその機体の状況を示しています。であるならば、経理や会計もそうでなくてはならないはずです。しかしながら今まで日本の企業だけは世界の常識に反して、いわゆる「含み経営」というやり方をしてきました。

 リアルタイムで企業の現在の座標と方向性を読みとり、未来への理念を込めて舵取りをしていれば、バブルに踊る事もなく、不良資産を抱えることもなかったはずです。経営や会計というものがわからない方たちが経営していたのが実体であり、不良債権を抱えた銀行、不良資産を抱えた企業、これらは会計の原理原則を軽視した結果です。「金の計算を細かく言うのは、大物ではない」という誤った風潮が日本にあることも一因でしよう。

⑤ 松下政経塾

 国家の経営、国家の未来という視点からの危機管理の話です。

 30年ほど前になるのでしょうか。松下幸之助氏は資財を投じて「松下政経塾」を茅ヶ崎に設立しました。当時、氏はこういう意味のことを言ったそうです。「現在の政治家に日本を任せていては、日本は滅びる。」

 そして塾の卒業生である衆議院議員の高市早苗氏はある文章の中でこう書いています。「私達塾生全員を集めて、幸之助氏は、この塾を卒業したら全員直ちに選挙に立て、もう時間(日本が危機に陥るまで)がない、そう言われたのです。」

 経営の神様と呼ばれた幸之助氏には、十年後・二十年後の日本の姿が「ありありと見えて」警告を発したのですが、誰も信じないために自ら行動を起こした方であったのです。日本を変えるにはどうしたらよいか。幸之助氏は、「新しい理念を持った政治家の育成からはじめるしかない」という結論に達したのでしょう。

 塾の卒業生はまだ若いのですが、幸之助氏の遺志をついで政治家として活躍されている方が多く出ています。次第に塾の卒業生が増えていきますから、やがて彼らの時代が来ることでしょう。

⑥ 阪神・淡路大震災の秘話
     
 安全という視点からの危機管理の話です。
 阪神大震災では死ななくていい人が沢山に亡くなりました。あれは、ほとんど人災です。阪神地区における巨大エネルギーの放出を偵察衛星が感知し、そのデータ分析から核爆発ではなく大地震であることを、事態発生の十分後にアメリカ大統領は移動中の専用機の中で報告を受け、さらにその事態の深刻さを認識しました。

 直ちに大統領は日本政府に対し、八千人の乗組員、食料、医薬品、看護婦と医師、多数のヘリを搭載し、なおかつ二十四時間フルに連続稼働できる空母の神戸港への派遣を申し出ましたが、村山内閣が事態の深刻さを認識したのは六時間後であるばかりでなく、この空母の派遣を軍事的音痴・危機管理音痴のために断ったのです。毛布だけ、受け入れたいと申し入れたと聞きます。クリントン大統領は、空いた口が塞がらなかったことでしょう。

 日本には優れた飛行艇があり、海面すれすれに飛行しながら海水を胴体に吸い込み、空中で放出する能力があります。この飛行艇と、ヘリコプターを動員して、火災発生の早期に空から消火作業をしていれば、多くの人が瓦礫の下で焼け死ななくて済んだはずです。何故、それをしなかったのか。空中から水をまくと、その水で死ぬ人がいると考えたのです。そこで行政の長は、誰もが責任を問われることを恐れて、そういう要請をしなかったのです。

 この事実を知っている国民は非常に少ないのにも驚きます。そういう報道すらされなかったのですから。また自治体からの出動要請がないために自衛隊は身動きできず、海外の援助隊が思うように活動できない日本のシステムに、自衛隊関係者をはじめとする当事者は歯ぎしりをしたことでしょう。
 この種の話は枚挙にいとまがないのです。

⑦ 誰も言わない日本最大の放射能危機

 2007.07.16新潟中越沖地震M6.8の発生により、柏崎刈羽原発が甚大な被害を受け、少量ながら放射能を漏洩する事故が起きました。日本列島全体が地震の巣のようなところにある、というか地震と火山によって出来た島ですから、地震が頻発するのは当たり前な地域なのです。そこに、危険な原子力発電所が全国各地に50基以上が建造されています。こんな国は世界中どこにも無いのです。

 一方、1979年にアメリカ合衆国のスリーマイル島で起きた原子力発電所の事故以来、約30年間、アメリカ合衆国は原子力発電所を建設していません。また、1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故によって、現在でもロシアの広範囲において深刻な被害が続いています。そして広大な汚染地域にもう人は住めないのです。原発を建設しない事を決定した、あるいは検討している国家も既にあります。

 浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)は定期的に起きるとされている東海沖地震の震源地想定域に位置しています。原発は絶対に安全と言いながら、現実には今までに深刻な事故が幾つも発生しており、浜岡原発も重大な事故を既に起こしてしまっています。もし、浜岡原子力発電所が巨大地震によって炉心溶融事故、または暴走事故を起こした場合、日本はチェルノブイリ原子力発電所の事故と同様に、壊滅的な被害を受けると予想されています。東海沖地震と原発震災のHPを参照して下さい。

 大地震発生最中、揺れが激しい時に炉心を安全に緊急停止するなど、誰も保障できる人はいないはずです。何故ならば、制御棒を全て挿入し、炉心を冷却しなくてはならないからです。炉心を冷却するには数日かかります。炉心が上下左右に振動しているときに、自動停止装置が正しく動作するかどうかという問題を例えクリアしたとしても、冷却水の配管が破損すれば、炉心は高温となり爆発、最悪の場合炉心溶融事故、または暴走事故になりかねません。その時は、重大な人命事故だけではなく、日本列島の約半分ぐらい、東京、大阪、名古屋を含む日本海までのほぼ全域が長期間の居住不能地域、避難命令地域となることでしょう。それが、どんな事態を日本に引き起こし、また世界へどんな影響を与えることになるのでしょうか。

⑧ アメリカ軍による日本の再占領 

 当然、日本は統治能力を完全に失いますから、アメリカ軍は日本を再占領し、これを統治する計画があります。そのためのログラムがあり、更に運用のための様々なシミュレーションがなされ、アメリカ合衆国は事態発生と同時に、その作戦を遂行する準備を既に終えてるのです。

 皆様はなぜだと思いますか。アメリカ合衆国の人道的行動という言い方はもちろん出来るのですが、実はそうではありません。前述した、日本の国家破産を想定したネバダ・レポートは何のためにあるのかという問いと同じです。日本の経済力はアメリカに次いで大きく、莫大な海外資産を持っています。国家破産も原発事故も、それは日本だけの問題ではすまないからです。直ちに、その経済的影響は世界へ波及します。それを可能な限り防止したい、それが本音です。

⑨ 地震予知によって安全に原子炉を停止させる方法

 それでは、重大な炉心事故を防ぐ方法は無いのか。実はあるのです。それが、前述した「地震の予知研究」です。串田さんという方が、約10年前から八ヶ岳南麓天文台(彼は星の観測中に、異常な電波を観測し、地震との関連性に気づいた)で全国の地震前兆を観測しており、私も彼の実験観測の会員の一人になり、二日に一度ぐらいの間隔で配信される、全国の地震予知と結果を分析したレポートを見るようになってから約8年ぐらいになります。かなりの成果を上げていることは間違いありません。「地震予報に挑む」 PHP研究所 串田嘉男著 参照。

 この研究が、国家的なプロジェクトになり、専用の電波と、専用の観測所を全国に造れば、飛躍的に研究が進むことは間違いありません。やがては、静止衛星から、日本全土を監視することも可能になるかも知れません。ところが、いろいろな妨害や、嫌がらせが相次ぎ、とうとうHPを閉鎖してしまいました。

 原子炉を安全に、確実に停止するためには、炉心に制御棒を全て挿入する必要があり、更に炉心を安全な温度に下げるまで数日間かかると言われております。予知された数日前に原子炉を完全に停止させることが出来れば、安全性は飛躍的に高まるのです。

 正しい危機管理意識とは、国家・社会・企業・組織・家庭における、理想社会実現のための「愛の一表現」であり、「指導者としての必須能力の一つ」であると思います。もちろん、これを理解できる国民、社員、家族に支えられて初めて実現できるのです。民主国家とはそうあらねばならないのです。

8.危機意識発現の原理        

① 危機回避の原理

「危機意識を持つ者は、危機を未然に回避し、軽減する」
「危機意識を持たざる者は、危機を醸成し、結果として招きよせる」

 これが危機の原理であり、真の危機管理の在り方であると考えます。それでもなお危機に至った場合、

「危機を正しく見て、危機を超越する」

という意識が、危機を最小限にくい止めるでしょう。超越するとは、理性で危機の本質を正しく観て分析することで恐怖感を克服し、その結果、智慧が回るための光明展開が可能な意識に到達するという意味です。今の日本国民は、自ら危機を招いただけでなく、危機に陥っていても、なお危機を認めようとしない、観ようとしていないのです。これは正に、ピータ・タスカが言う「ゆでガエルコース・安楽死コース」そのものです。

 政治家だけではなく、一般国民という集合体の意識がそうさせているのです。すなわち、現在、大いなる危機を迎えているという意識そのものが希薄なのです。正に「悪農は草を見て草を取らず」に例えられます。国民全体が思考停止に陥っているのです。

 従って、一旦、全ての国民が危機の中で苦しみ抜いて「危機であることをまず正しく認識し、私利私欲を捨てて国家のあるべき姿を渇望するに至るまで」、この危機を真に克服することはできないという結論に達します。

② 危機を見透す原理

 危機感とは、直感的に「観じる」ものです。「悪農、中農、善農」の例えの通り、表面的な現象を見ているだけでは善農になることはできません。では善農になり、危機を直感的に「観じる」ためには何が必要か。それは、

本質を知ること、理念を持つこと、

   この二点であると思います。

 本質とは、深く洞察することによって物事の成り立ちとその変化・現象・運動を支配している法則を知ることであり、理念とは本来あるべき姿、理想とする姿、こうありたいと願う姿のことです。本質を知り、理念(具体的姿である必要がある)を持っていてはじめて正しい危機意識を持つことができます。

 それはあたかも星の写真フイルムを重ね合わせて、ごくわずかな位置の変化から小惑星を発見するがごとく、「表面的な現象」というフィルムと自らの「具体的理念」というフィルムを、心の中で重ね合わせる事により、わずかなズレ・違い・兆候を瞬時に「観じる」のです。

 最初は、どこがずれているかはわからない場合が多いのですが、しかし、何か違うということがわかる。じっと心の中を探索していくと、次第にそのポイントが絞られていき、やがてそのズレを明確に認識する。これが、直感的に「観じる」というメカニズムと考えます。

③ 理念というフィルム醸成の原理  
  
 では、どうすれば本質を知り、理念を持つことができるか。それは理想という目標と、それに近づけたいという情熱、使命感、であると思います。

 自らの心配事や雑事に捕らわれてばかりいないで、常々あらゆる事に関心を持ち、客観的立場(真我)において自問自答しながら、自らの思想と哲学を醸成していく中で必然的に本質を洞察する力が養われると考えます。

 かつ、このプロセスにおいて、神理を具体的に応用しようという意識が、理想実現のための一つの理念というものとなり、実現可能な具体的姿として現れてくると考えます。そしてこれが「心の中のフイルム」となって定着していくのです。この「心のフィルム」を沢山持っている人は、いろいろなことが瞬時に見えるに違いないでしょう。もちろんここには、他力の光も大いに作用すると考えられます。

 子供を立派な大人に育てたいと思う親は、理想の男性なり女性像というものがあるはずであり、そのためには子供のしつけ・教育・環境について苦心する、そのようなものと同じです。すなわち、
 
正しい危機感・管理というものは、まさに理想の社会を建設することと本質的には同じ意識のことである。

 おわかりいただけたでしょうか。理想社会を実現していくそのプロセス、段階を踏みながら実現していく過程における必然的な意識であると言えます。

9.おわりに               

 理想国家建設の第一段階は、物質よりも精神性を優先する、あるいは科学と精神を調和する、その様な価値観の革命ともいうべきものでなくてはならない事が、前述の日本の危機を招いた本質を論じたことからもわかるはずです。

 理念が社会システムの変革を促し、新しいシステムを試行錯誤しながら築き上げていく間、何が正しいのか、どれを選択すればよいか、大きな混乱の中で混沌とした状態が続くはずです。それは人類にとって非常に大きな試練であり、一旦、人類が闇に沈むときであろうと思います。

 その時、神理を学んだ私達や、神を信じる人々の一人一人が、様々な分野(家庭、職場、専門分野)における精神的支柱であらねばならないでしょう。必ずしも、言葉で語るのではなく、その生き方、すなわち、皆様方の日常の表情、積極性、明るさ、信念、希望、愛、勇気、智慧、・・・というものをもって語ることです。

 具体的に何をすることが神の意に沿うのかということを「正しい危機管理」という点から考えていみてはいかがかと考えます。弱々しい善人でなく、一人一人が強い善人、強者とならねばこの世を変えていくエネルギーとはなり得ないと考えるからです。

 人類のシナリオがどうなるのか、誰もがそう考えざるを得ない日が来ようとしています。様々な予言書がそのシナリオを示していますが、ただ単にそのまま受け入れるのではなく、それを何とかして変えたいというひとり一人の念いが大事なのです。例え、結果として成果を上げられなくとも、その持続的念いのエネルギーは、この世で生きた証しであり、勲章となるに違いありません。



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